テクノロジー・材料

光制御されたトポロジカル半金属状態の創成〜結晶端の特異な電子状態を理論的に予見〜

研究イメージ画像 (Image by Unconventional/Shutterstock)

原子は原子核と電子で構成されています。そして、電子がとることのできるエネルギーは、飛び飛びの値を持ちます。これをエネルギー準位と呼びます。そして、結晶中の電子の振る舞いは、非常に多数のエネルギー準位が束になった帯(バンド)状のエネルギー構造に基づいて理解されてきました。近年、相異なるバンドが交差・反転して捻じれているトポロジカル物質という結晶群が発見され、その物理的起源を探る基礎研究や電気抵抗が極めて小さい新機能デバイスなどへの応用研究が、世界レベルで精力的に行われています。


本研究では、トポロジカル物質を構成する新規な素材そのものを探索するのではなく、結晶にレーザーを照射して電子の状態を変調することでバンド構造の交差・反転を誘起し、その結果生じる新奇な物理現象を追究しました。レーザーの照射で誘起された動的な状態や励起状態におけるトポロジカル物質の研究は、未開拓ゆえに様々な潜在的な可能性を秘めています。


具体的には、量子井戸という2次元半導体(一種の絶縁体)に強いレーザーを照射して光と電子が一体化した量子状態を創成し、ある特定のレーザー強度のとき異なるバンド同士が円錐交差し得ることを理論的に示しました。これはレーザーによって絶縁体が半金属に相転移したことに対応します。この際、微小なバンドギャップで隔てられた近似的な円錐交差も付随して発現することが分かりました。さらに、このような半金属相の結晶端に現れる1次元バンド間のギャップ内に、平坦な線分状の特異なエネルギー準位が現れることを見出しました。


この研究は、未開拓である非平衡状態・励起状態におけるトポロジカル物質の物性解明に向けた探究に資することができると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学数理物質系
日野 健一 教授

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