2023年度第1回「数理物質系学際セミナー」のご案内

2023.05.25

イベント

数理物質系学際セミナーの概要

数理物質系では、2022年10月より、数理物質系学際セミナーを新たに始めました。本セミナーは、主に数理物質系における研究内容を系内で共有することにより、学際融合・領域融合した新しい研究分野の創出を目指すことを目的としています。

2023年度第1回数理物質系学際セミナーのご案内

開催日時

2023年6月16日(金) 16:45開始(75分間)

 

プログラム

 

第一席
講演者:長崎 幸夫 教授(物質工学域)
司会:山岸 洋 助教(物質工学域)
タイトル:
腸内活性酸素種を消去する抗酸化ナノ粒子が健康を導く
Nanoparticle-engineered antioxidants and health

概要:炎症時には炎症系の細胞が浸潤し、サイトカインや活性酸素種(ROS)を放出するものの、往々にしてこれらの過剰な産生がむしろ生体を攻撃し、害を及ぼすことが問題となる。特にROSは極めて強い酸化剤であり、過剰に産生されるROSは生体内タンパク質、脂質やDNAなどを酸化し、アポトーシスや機能障害を誘発する。このようなROSによる疾病への関与を低減するため、ビタミンCやEなどの天然物抗酸化剤や様々な合成抗酸化剤が開発され、がん患者のQOLの改善や、脳梗塞後の機能改善など一定の効果が報告されているものの、炎症部位などROSが過剰産生される部位で、顕著な薬効を発現させるには至っていない。低分子量の抗酸化剤は非特異的かつ瞬時に体内に広がるだけでなく、正常細胞内に取り込まれ、その細胞内レドックスバランスを破壊し、副作用の原因となる。このようにROSは「諸刃の剣」としてはたらくため、病気に関連するROSを選択的に消去する新しい戦略が必要である。我々は、単独では薬効がなく毒性を示す低分子量の抗酸化剤を高分子ミセルをプラットフォームとする分子会合体に共有結合的に導入することにより毒性を回避し、かつ炎症部位などROSが過剰産生される様々な疾病に対し著しい治療効果を示すことを見出した(図)。設計したナノ粒子型抗酸化剤はその数十ナノメートルサイズにより細胞内に取り込まれにくいため、正常細胞内のレドックス反応は破壊せず、マクロファージや好中球などの炎症細胞が細胞外に発生する過剰のROSを中心に消去する。このナノ粒子型抗酸化剤は、生体適合性の良いポリエチレングリコール(PEG)を表層に有するコアーシェル型のナノ粒子であるため、生体に対しても副作用が低いこと、免疫システムを刺激しないこと、また血中滞留性が高いことなどが特徴である。このナノ粒子型抗酸化剤は経口投与することで消化管に局在化し、過剰に産生する腸内ROSを選択的に消去することでストレス性鬱病や運動能力を改善することを見いだしたので、まとめて紹介する。

図 a)悪玉活性酸素種を選択的に除去する新しいレドックス高分子の設計; b)ゼブラフィッシュに対する抗酸化剤の効果(赤い蛍光はゼブラフィッシュの健康なミトコンドリアを表す。TEMPOLではほぼ全滅。)

 

第二席
講演者:山﨑 信哉 助教 (化学域・CRiES)
司会:中村 貴志 助教 (化学域)
タイトル:
放射性核種の処分と環境動態に関する研究
Studies on disposal of radionuclides and environmental fate

概要:
原子力発電は20世紀以降のエネルギー生産を支える重要な技術です。しかし、原子力発電により生じる放射性核種の適切な処理法は今もまだ開発途上であり、様々な技術が提案されています。また、稀に起こる原子力施設におけるシビアアクシデントにより環境中に放出される放射性核種は、環境や生体影響の観点で重要です。これらの影響を評価するためには、放射性核種の量に加えて放射性核種の化学状態まで深堀りすることが重要と考えています。今回のセミナーでは、放射性核種の処理法及び環境中に存在する放射性核種の化学状態分析に関連する研究についてご紹介します。

 

実施方法と参加対象者

会場での講演をzoomで同時配信するハイブリッド方式で行います。参加費用は無料です。原則として、どなたでも参加できます。ただし、参加人数の上限を超えた場合には、参加をお断りする場合があります。

 

セミナー会場

総合研究棟B棟0112室(ハイブリッド配信あり)

 

お申し込み方法と締め切り

・数理物質系および関連センターの構成員(教員と学生など)
直接 (Garoon掲示板、TWINS、メール等で)案内とzoom リンクを通知しますので,登録なしで自由に参加することができます。
・系外および学外の参加希望者
Googleフォームで事前にお申し込み下さい。参加申し込みの締め切りは6月13日(火)です。お申し込みされた方には、6月14日(水)までに、登録メールアドレスにzoomの接続情報をお送りします。

 

Zoom参加の際の注意点

・名前表示を「所属 氏名」で設定してください
・セミナー開始10分前を目安に、参加用URLに接続してください
・基本的に参加者は、ビデオ=オフ、マイク=ミュートとしてください

 

お申し込み先

https://forms.gle/SqKx864M3XycWs2S6

 

お問合せ先(Zoomアクセスの際の不具合時など)

数理物質エリア支援室総務担当(担当:佐藤)
E-mail: suurisoumu(at)un.tsukuba.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい
Tel:029-853-5621