研究群長メッセージ

 

みなさん、筑波大学理工情報生命学術院数理物質科学研究群にようこそ。

我々の数理物質科学研究群は、数物系の大学院教育を行い、博士、修士の学位取得を目標とする教育組織です。数学、物理、化学、応用理工学、国際マテリアルズイノベーションの各学位プログラムからなる理学から工学にわたる理工融合の大学院です。

現代の科学は実験結果や観測結果などの客観的な事実と論理に基づく普遍的な知的活動です。独りよがりではない健全な科学研究のためには、多数の実験を繰り返し、多くの事実を集めることが必要であって、その中に共通する積み重ねられた事実とごまかしや嘘のない論理だけが科学的な議論の出発点となります。この科学的活動の背景には、なぜだろう、どうしてなのかといった知的好奇心や探究心という内的な動機と、新しい科学的知見を人々の生活や経済活動にとって有用なものとして社会や文化に貢献したいという外的な動機とをあわせ持つ科学の二面性があります。理学と工学の違いは、これらの内的なものを追究するか外的な方向を主に目指すのかの方向の違いであるといえるでしょう。我々の大学院では、この理学系と工学系の教員、学生が既存の枠を越えて交流することで各自の研究をより一層発展させることを目指しています。

科学の究極の目標を人類の幸福を実現することとするとき、この二面性は相反するものではなく、両立し相補的なものであることは常に意識しておく必要があります。知的好奇心を極限まで追究した結果が、全く予期していなかったものに応用され、新しい技術革新につながった例や、逆に最先端の技術を使うことによってはじめて究極の知的好奇心に基づく理論の正否が判断できた例は、いくつもあります。内的なものを追究することと外的なものへの指向は、一次元的な相反する方向ではなく、複雑に絡み合った多次元的なものであって、研究活動における興味の多様性、ひいては異分野交流の重要性を示唆します。

自分の価値観や特定の研究分野という、いわば殻、安心するための防御壁をのり越えて、異なる分野の人々と直接に交流することはとても重要です。我々の研究群で採用している学位プログラム制も、この分野間の壁を低くし、社会の多様な要求に対して柔軟に対応し得ることを目的としています。各学位プログラムで学ぶ皆さんには、それぞれの専門性ある研究を妥協することなく極限まで追究することで、結果的には、大きく変化しつつある現代社会の未知の将来の要求にも対応できる応用力、潜在的能力を持った人材となることを強く期待しています。

 

理工情報生命学術院

数理物質科学研究群長

初貝安弘