2023年度第5回「数理物質系学際セミナー」のご案内
2023.11.02
数理物質系学際セミナーの概要
数理物質系では、2022年10月より、数理物質系学際セミナーを新たに始めました。本セミナーは、主に数理物質系における研究内容を系内で共有することにより、学際融合・領域融合した新しい研究分野の創出を目指すことを目的としています。
2023年度第5回数理物質系学際セミナーのご案内
開催日時
2023年11月17日(金) 16:45開始(75分間)
プログラム
第一席
講演者:溝口知成 助教(物理学域)
司会: 都倉康弘 教授(物理学域)
タイトル:トポロジカル物質相の物理
Physics of topological phases
概要:物性物理学は金属・半導体(絶縁体)・磁性体など多様な物質の相の区分とその間の移り変わりを、量子力学や統計力学などの基礎物理法則を用いて記述する学問です。従来、異なる物質相の区別は対称性の違いによって理解されてきました。例えば、水と氷では「空間並進対称性」が異なります。近年、対称性の変化を伴わないにも関わらず観測量に明確な変化が現れる相の変化が見出されています。これらはトポロジーという数学的概念を導入して初めて区別できるような相であり、「トポロジカル物質相」としてその存在が確立しています。さらに最近では、既存の現象や物質を理解することにとどまらず、その数理的性質の普遍性を活かして人工的にトポロジカル物質と類似の状態を作り出し、応用に役立てようとする試みもあります。本発表ではトポロジカル物質相とその普遍的性質について概説します。また私自身の最近の研究成果についても紹介いたします。
第二席
講演者:武安光太郎 助教(物質工学域)
司会:山岸洋 助教(物質工学域)
タイトル:不均一系触媒反応と生体内反応におけるエナジェティクスの相乗的理解
Development of Materials for Advanced Electrochemical Biodevices
概要:アブストラクト:カーボンニュートラルを担う不均一系触媒反応として、カーボン系触媒による燃料電池正極反応、CO 2 をアルコールやカルボン酸へ転換する反応を対象として研究を進めています。反応速度を決める重要因子を明らかにし、それを触媒開発へフィードバックしています。例えば最近、窒素ドープカーボン触媒において、燃料電池正極反応の活性を決める素過程として、電子的還元と熱化学的な酸素分子吸着がカップルした過程を明らかにしてきました。この過程は、イオン性の中間状態から反応がスタートするため、水和によって反応の進行が阻害されます[1]。そこで、数十μmオーダーの立体構造を作ることで疎水性を強化した窒素ドープグラフェン触媒を合成しました。さらに、疎水性の導入によって妨げられたプロトン伝導を補うため、サブミクロンのプロトン伝導粒子を導入したところ、メタルフリー触媒として世界最高レベルの性能を持たせることに成功しました[2]。
一方、燃料電池正極反応では、開発に成功した触媒はもとより、白金を用いた最先端の触媒であっても、反応自体を進めるために、利得エネルギーの30-40 %を過電圧として使用する必要があります。この分のエネルギーは、電気的エネルギーに変換することはできず、熱として散逸します。生体細胞内のミトコンドリアにおいても燃料電池正極反応が進行しますが、そこでの熱産生は考慮されてきませんでした。
細胞内の熱産生は、生命維持に必要な最も基本的な生物学的機能の一つですが、熱産生の物理的メカニズムは、実験的にも理論的にも解明されていません。現在のところ、熱産生はミトコンドリア内膜を横切るプロトンのリークに由来するという説が広く受け入れられていますが、実験的にも理論的にもほとんど根拠がありません。私たちは、ミトコンドリア呼吸鎖における熱産生の大部分が反応駆動のための過電圧に由来すること、さらには、過電圧による熱産生とATP産生のエネルギーバランスが、呼吸速度に応じて変調することを検証しました[3]。今後、熱産生機構、熱の利用機構の解明を進め、不均一系触媒への応用も試みます。
[1] K. Takeyasu*, J. Nakamura* et al. Angew. Chem. Int. Ed. 60, 5121 (2021).
[2] S. K. Singh, K. Takeyasu*, J. Nakamura* et al., Angew. Chem. Int. Ed. 61, e202212506 (2022).
[3] N. A. P. Namari, J. Nakamura*, K. Takeyasu* et al., submitted.
実施方法と参加対象者
会場での講演をzoomで同時配信するハイブリッド方式で行います。参加費用は無料です。原則として、どなたでも参加できます。ただし、参加人数の上限を超えた場合には、参加をお断りする場合があります。
セミナー会場
総合研究棟B棟 110室(ハイブリッド配信あり)
お申し込み方法と締め切り
・数理物質系および関連センターの構成員(教員と学生など)
直接 (Garoon掲示板、TWINS、メール等で)案内とzoom リンクを通知しますので,登録なしで自由に参加することができます。
・系外および学外の参加希望者
Googleフォームで事前にお申し込み下さい。参加申し込みの締め切りは11月14日(火)です。お申し込みされた方には、11月15日(水)までに、登録メールアドレスにzoomの接続情報をお送りします。
Zoom参加の際の注意点
・名前表示を「所属 氏名」で設定してください
・セミナー開始10分前を目安に、参加用URLに接続してください
・基本的に参加者は、ビデオ=オフ、マイク=ミュートとしてください
お申し込み先
https://forms.gle/nvaQyWJeHZEug2d39
お問合せ先(Zoomアクセスの際の不具合時など)
数理物質エリア支援室総務担当(担当:佐藤)
E-mail: suurisoumu(at)un.tsukuba.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい
Tel:029-853-5621