2023年度第7回「数理物質系学際セミナー」のご案内

2024.01.10

イベント

数理物質系学際セミナーの概要

数理物質系では、2022年10月より、数理物質系学際セミナーを新たに始めました。本セミナーは、主に数理物質系における研究内容を系内で共有することにより、学際融合・領域融合した新しい研究分野の創出を目指すことを目的としています。

 

2023年度第7回数理物質系学際セミナーのご案内

開催日時

2024年1月19日(金) 16:45開始(75分間)

 

プログラム

第一席

講演者:吉田 将人 准教授(化学域)
司会: 中村 貴志 助教(化学域)
タイトル:機能解明を指向した生物活性天然物の全合成
Total Synthesis of Biologically Active Natural Products Toward Clarification of the Mechanism of Action

近年の小分子化合物を利用した創薬研究は、その新薬開発の成功確率が3万分の1程度と言われています。その打開策として、従来用いられてきた化合物群とは異なる新しいケミカルスペースの活用が求められており、その候補として特徴的な構造を有する天然物およびその誘導体が考えられています。この理由として、天然物には興味深い生物活性を示す化合物が多く存在するだけでなく、臨床利用されている医薬品が示すケミカルスペースと極めて高い類似性をもち、天然物の構造を有効活用することで新規医薬品開発のシード探索の効率化が期待されていることにあります。私たちは、このような特徴的な構造と生物活性を示す天然物群の創薬展開を指向して、ケミカルスペースの拡大を可能とする多様性指向型合成、それに基づく機能解明研究を検討しています。これまでに、組み合わせの概念に基づく液相法でのパラレル合成、高分子担体を用いる固相法を活用したコンビナトリアル合成を中心として、生物活性環状ペプチド類や新規創薬標的とされるタンパク質間相互作用阻害活性を示す天然物の全合成およびその誘導体合成を達成しています。本発表では、これまでに検討してきた生物活性天然物の全合成研究について、作用機序解明に向けた合成の概略とそれを利用した誘導体合成および生物活性評価の結果などについてご紹介したいと思います。

 

第二席

講演者:柏木 隆成 講師(物質工学域)
司会: 山岸 洋 助教(物質工学域)
タイトル:高温超伝導体単結晶を用いたテラヘルツ波光源の開発
Development of high temperature superconducting terahertz emitters

電波と光波の中間の周波数帯域に位置する波長0.1 mm 程度の電磁波は,テラヘルツ波と呼ばれ,次世代の電波技術への応用の観点から注目されています。例えば,非破検査・分析技術,セキュリティー,大容量通信技術,電波天文などの基礎科学,ガンなどの医療診断と,幅広い分野への応用が期待されております [1,2]。このようなテラヘルツ波の応用を促進するには,小型・安価・簡便な発振器及び検出器の開発が必要不可欠です。現在は,量子カスケードレーザーや共鳴トンネルダイオードなどの半導体小型デバイスを中心にその開発が精力的に行われています[3, 4]。我々は,このテラヘルツ帯の周波数領域に,高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi2212)単結晶を用いた発振器(Bi2212-THz波発振器)[5]でアプローチする研究を行なっております。
Bi2212単結晶は,銅酸化物高温超伝導体の1つで,超伝導転移温度は,液体窒素温度の77 Kより高温の約90 Kになります。この物質は,超伝導を示すCuO2層と絶縁体的なBi2O2層が交互に積層した層状物質になります。そのため,結晶内にジョセフソン接合と呼ばれる絶縁体を超伝導体でサンドイッチした構造が自然に形成されています。例えば,厚さ1μmの結晶には,原子レベルで均一なジョセフソン接合が約670枚含まれることになります。また一般にジョセフソン接合では,接合への印加電圧に比例した高周波電流が発生することが知られています[6]。よって,このBi2212単結晶を微細加工し,適宜電極等を設けた素子に電圧を印加することで,テラヘルツ帯の電磁波発生が可能になります。当日は,このBi2212-THz波発振器の原理や現在の取り組み等について紹介いたします。
1) B. Ferguson and X.C.Zhang, Nat.Mater. 1, 26 (2002).
2) M. Tonouchi, Nat. Photonics 1,97 (2007)., S.S. Dhillon et al., J. Phys. D Appl. Phys. 50, 043001 (2017).
3) M. Asada and S. Suzuki, J. Infrared Milli. Terahertz Waves 37, 1185 (2016).
4) B. S. Williams, Nat. Photonics 1, 517 (2007)., K. Fujita et al., Nanophotonics 8, 2235 (2019).
5) L. Ozyuzer et al., Science 318, 1291 (2007).
6) B.D. Josephson, Phys. Lett. 1, 251 (1962).

 

実施方法と参加対象者

会場での講演をzoomで同時配信するハイブリッド方式で行います。参加費用は無料です。原則として、どなたでも参加できます。ただし、参加人数の上限を超えた場合には、参加をお断りする場合があります。

 

セミナー会場

総合研究棟B棟 110室(ハイブリッド配信あり)

 

お申し込み方法と締め切り

・数理物質系および関連センターの構成員(教員と学生など)
直接 (Garoon掲示板、TWINS、メール等で)案内とzoom リンクを通知しますので,登録なしで自由に参加することができます。
・系外および学外の参加希望者
Googleフォームで事前にお申し込み下さい。参加申し込みの締め切りは1月16日(火)です。お申し込みされた方には、1月17日(水)までに、登録メールアドレスにzoomの接続情報をお送りします。

 

Zoom参加の際の注意点

・名前表示を「所属 氏名」で設定してください
・セミナー開始10分前を目安に、参加用URLに接続してください
・基本的に参加者は、ビデオ=オフ、マイク=ミュートとしてください

 

お申し込み先

https://forms.gle/ibSSDopkRojPSza68

 

お問合せ先(Zoomアクセスの際の不具合時など)

数理物質エリア支援室総務担当(担当:佐藤)
E-mail: suurisoumu(at)un.tsukuba.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい
Tel:029-853-5621