2023年度第8回「数理物質系学際セミナー」のご案内

2024.01.25

イベント

数理物質系学際セミナーの概要

数理物質系では、2022年10月より、数理物質系学際セミナーを新たに始めました。本セミナーは、主に数理物質系における研究内容を系内で共有することにより、学際融合・領域融合した新しい研究分野の創出を目指すことを目的としています。

 

2023年度第8回数理物質系学際セミナーのご案内

開催日時

2024年2月9日(金) 16:45開始(75分間)

 

プログラム

 

第一席

講演者:久保 敦 講師(物理学域)
司会: 都倉 康弘 教授(物理学域)
タイトル:光の局在性・構造化・スピン
Localization, structuring and spin of light

「光線」という言葉が指し示すように、光は直線的にどこまでもまっすぐに進むもの、との印象があります。実際、レーザーポインターやサーチライトを見れば明らかですし、地表からはるか遠く月に向けたレーザー光は月面のミラーで反射され地球まで戻ってきます。ところが、自由空間中で軌道が湾曲し遮られても回復する、あるいは、光速cより速い/遅い速度でパルスが自由空間中を伝搬する。このような風変りな光線も存在します。
上述の特殊な光は、位相や波数ベクトルを細密に調整した多数の光波成分の干渉の効果として現れます。光ビームの断面内で強度や位相、局所偏光状態等が強く変化したものを総称してストラクチャードライト(SL)と呼びます。エバネッセント波や、ラゲールガウスビーム、ポアンカレビームなどもこれに含まれます。SLの研究は2010年頃から理論・実験の両面で大きな進展を見せています。その一つが光波の角運動量であり、対物レンズの焦点、微小光導波路、表面プラズモンポラリトン(SPP)等、光の運動量密度が急峻に変化する領域における「横スピン角運動量」が見出されています。
これらの研究は、Imbert-Fedorovシフトが電子スピン-Hall効果の光学対応に区分されるなど、電子系と光学系との密接な物理的対応を詳らかにしています。また、構造化されたSPP波による電子スピンの新規制御への展開も期待されます。本発表では、我々が取り組む構造化表面プラズモンポラリトンの生成・観察例を含め紹介したいと思います。
参考文献:
1) N. Ichiji, D. Oue, M. Yessenov, K. L. Schepler, A. F. Abouraddy, A. Kubo, Phys. Rev. A 107, 063517-1-14 (2023)
2) N. Ichiji, H. Kikuchi, M. Yessenov, K. L. Schepler, A. F. Abouraddy, A. Kubo, ACS Photonics, 10, 374-382 (2023)
3) N. Ichiji, Y. Otake, A. Kubo, Nanophotonics, 11, 1321-1333 (2022)
4) Y. Dai, Z. Zhou, A. Ghosh, R. S. K. Mong, A. Kubo, C.-B. Huang, H. Petek, Nature, 588, 616-619 (2020)

 

第二席

講演者:茂木 裕幸 助教(物理工学域)
司会: 寺田 康彦 准教授(物理工学域)
タイトル:ナノスケールの超高速現象を可視化する顕微鏡法 ~二次元半導体の光ダイナミクス計測へ~
Microscopy for visualizing nanoscale ultrafast phenomena
– Toward measuring photo-excited dynamics in two-dimensional semiconductors –

私たちの日々の生活には、スマートフォンやインターネット等、半導体を使った情報技術が欠かせないものとなっています。これまで、半導体素子を微細化することで高性能化が進み、素子サイズの単位は10 nmを下回る領域に入り、動作時間のスケールも1 psに近づくまで高速化が進んでいます。素子のサイズが十分に小さくなると、原子レベルの欠陥等、ナノ構造が性能に影響を及ぼすようになります。このような状況の中で、デバイス内で生じる現象を十分洞察するためには、原子スケールの空間分解能を持ちながら超高速(フェムト秒~ピコ秒)の時間分解能を持つ極限的な顕微計測技術が必要になります。これまで私たちは、先鋭な探針を用いて原子一つ一つを見られる走査プローブ顕微鏡(SPM)と、超高速レーザー技術を組み合わせた時間分解SPM装置を開発し、その応用を先駆けて示してきました。
一方、将来を見据えると、従来使われてきたSi等の半導体材料による素子微細化への課題も見え始めています。最近では、極限的な薄さを持ちながら高い電気伝導や光応答性能を持つ、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDCs)系層状材料に代表される2次元物質が次世代材料候補として注目されています。本発表では、これまでの時間分解SPM技術の開発について紹介した後、最近の成果として、下図に示すような時間分解多探針SPM装置を用いた二次元半導体の局所ダイナミクス計測例を紹介します。これにより、二次元半導体における光応答に主要な役割を果たす励起子の超高速ダイナミクスを数nmスケールの空間分解で計測することに成功しました[1]。また、ごく最近開発された時間分解原子間力顕微鏡 等の測定応用例[2]についても、関連する技術とともに紹介します。
[1] H. Mogi et al, npj 2D Mater. Appl., 6, 72 (2022)
[2] H. Mogi et al, Appl. Phys. Express 17, 015003 (2024)

 

実施方法と参加対象者

会場での講演をzoomで同時配信するハイブリッド方式で行います。参加費用は無料です。原則として、どなたでも参加できます。ただし、参加人数の上限を超えた場合には、参加をお断りする場合があります。

 

セミナー会場

総合研究棟B棟 110室(ハイブリッド配信あり)

 

お申し込み方法と締め切り

・数理物質系および関連センターの構成員(教員と学生など)
直接 (Garoon掲示板、TWINS、メール等で)案内とzoom リンクを通知しますので,登録なしで自由に参加することができます。
・系外および学外の参加希望者
Googleフォームで事前にお申し込み下さい。参加申し込みの締め切りは2月6日(火)です。お申し込みされた方には、2月7日(水)までに、登録メールアドレスにzoomの接続情報をお送りします。

 

Zoom参加の際の注意点

・名前表示を「所属 氏名」で設定してください
・セミナー開始10分前を目安に、参加用URLに接続してください
・基本的に参加者は、ビデオ=オフ、マイク=ミュートとしてください

 

お申し込み先

https://forms.gle/UrEb5SDLMXnzoHQ17

 

お問合せ先(Zoomアクセスの際の不具合時など)

数理物質エリア支援室総務担当(担当:佐藤)
E-mail: suurisoumu(at)un.tsukuba.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい
Tel:029-853-5621