令和4年度数理物質科学研究群・研究科学位記授与式を行いました
2023.03.28
令和4年度数理物質科学研究群・研究科学位記授与式を行いました
令和5年3月24日1H101にて数理物質科学研究科・数理物質科学研究群
博士後期課程49名の修了生と初貝研究群/研究科長、
学位プログラム・サブプログラムリーダー/専攻長出席のもと、
令和4年度数理物質科学研究群・研究科学位記授与式を行いました。
博士の学位を授与された皆様のますますのご活躍をお祈り申し上げます。
式辞
本日、筑波大学から博士の学位を授与された皆さん、大変おめでとうございます。
入学以来日々の研鑽を重ね、本日の学位授与にいたるまでの努力の結果、学位取得に至ったこと真に喜ばしく、教職員を代表しまして心よりお祝い申し上げます。
この3年間を振り返ると、この期間はコロナウイルス感染症が世界的に蔓延した期間に重なり、
厳しく制限された活動のみしか行えない時期でした。学生の皆さんのみならず教員にとっても、今までに全く経験したことのない困難をともなう大学院生活、研究生活であり、研究を継続するためにはいろいろな工夫が必要であったことを振り返りますと、本日無事学位の授与にいたることができたこと、皆様にとっての喜びはひとしおであろうと思います。
その一方でこの困難な時期は、現代科学の恩恵を強く感じた時期でもありました。このコロナ禍における研究活動を経験して、皆さんもオンラインの活動の重要性を強く感じていることと思います。いうまでもなくこのオンライン活動はインターネットはじめ現在科学に基づく技術革新の成果であり、これもまた現在科学の大きな成果であるワクチン開発を含めて、現代科学なくして今日の学位記授与式に至ることは、およそ不可能であったか、もしくはより大きな困難があったことは想像に難くありません。十七世紀のイギリスでのペストの大流行の際には、ワクチンも特効薬もなく、勿論インターネットもなく、現代科学の祖というべきアイザック・ニュートンは一年以上も大学から離れなければならなかったことはよく知られています。二十一世紀の我々が享受しているニュートンの時代から現在に至る間のおよそ四百年弱の科学の恩恵に対して深く感謝せずにはいられません。
この機会に皆さんが心血を注いだ科学的な研究活動について振り返って見たいと思います。ニュートンの時代も現在においても、科学における活動は、究極的には極めて個人的なものに帰着します。ニュートンのアイデアやガリレオの観測などを思い起こせば、例え大きな研究グループによる研究成果であっても、その最初のアイデアはある個人の頭のなかで生まれたものであるはずですし、新しい事実の発見に関しても、誰かある個人が、世界ではじめてそれを見たわけです。本日、博士の学位を授与された皆さんは、学位につながった研究活動の中で必ずやこのような個人的な体験をしていることと思います。これが科学の発見の出発点です。ただし研究としてはこの個人的な体験だけでは不十分であって、その極めて個人的な体験を論理的に主張できるものとして、裏付けをとり、論文で世界に周知することで、広く社会のもの、他者からアクセスできるものとすることが必要です。これが「知の創造」であって、皆さんが学位論文としてまとめたものは、そのすべての論文が、この知の創造であって人類が積み上げてきた知の総体に新しい一ページを付け加えたものであるはずです。本日の学位取得にいたる皆さんの研究成果、知の創造は、真にすばらしく、心より賞賛したいと思います。
今日皆さんが取得された博士の学位は、決して大学や国立の研究機関などいわゆるアカデミアを目指すためだけのものではありません。知の創造に貢献した経験を持つ個人、独立した知識人としての証です。事実とそうでないものを、他の影響を排除し、独立した個人として自分ひとりで判断できることが知識人の条件です。皆さんは大学院での研究活動のなかで、この知識人としての活動を実践し博士論文としてまとめることで、知識人たることを証明し広く周知したわけです。皆さんが、今後進まれる分野は、必ずしも博士課程での専門に限らず、極めて多様だと思いますが、如何なる分野においても独立した知識人として、自信をもって活躍して行かれることを希望します。また、皆さんは、必ずやその分野で活躍されるだけの基礎力をもつ人材であることを教職員一同確信しています。
現在の技術革新の驚きのひとつに、小説など長文の文章や芸術的な画像など今まで人間でなければ生み出せないと考えられてきたものを、大規模な機械学習にもとづき生成する人工知能の実現があります。このような革新的技術が誰でも容易に試せる時代が既に現実となったわけです。今後の社会においても、人工知能に限らず、我々の予想を越えた科学技術の発展、社会展開が確実におきると予想されます。現在予想できないもしくは予想をこえるような新しい時代に適応し、新しい科学、社会、文化を作って行く人材は、独立した高度知識人としての博士取得者の皆さんであるはずです。
我々教員一同、本日学位取得された皆さんは今後の社会を改革していく高度知識人として、本学の名を高めてくれるものと自負しています。その一方で皆さんには、社会の期待に応え、後輩の範として本学の名を高め、博士課程で身につけた基礎の上で社会に貢献し、新しい世界を切り開いてゆかれることを強く期待しています。
本日は博士の学位取得、まことにおめでとうございました。
以上をもって私の式辞といたします。
令和5年3月24日
筑波大学大学院 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群長・研究科長
初貝安弘